この記事の結論

企業への仕事提案は、相手の業務課題を聞き、工程を切り分け、支援体制・品質・納期・収支の条件を示して小規模な試行から確かめます。A型の賃金とB型の工賃、受注売上と経費控除後の収支を混同せず、制度・契約の個別判断は指定権者等に確認します。

この記事の目次
  1. 企業に提案する前に、事業所側の「受けられる条件」を決める
  2. 提案可能な作業を工程単位で書き出す
  3. 提案先は「課題との適合」と「取引の実現性」で選ぶ
  4. 初回連絡から小規模な試行まで
  5. 1. 企業ごとに仮説を立てて問い合わせる
  6. 2. 面談では「仕事の条件」を聞き取る
  7. 3. 試行の範囲と評価方法を合意する
  8. 見積りは売上だけでなく、経費・賃金または工賃の原資を確認する
  9. 営業記録を残し、次の提案へつなげる
  10. よくある質問
  11. 営業資料には何を載せればよいですか?
  12. 障害者優先調達制度を使えば、民間企業から受注できますか?
  13. A型とB型で提案内容を変える必要がありますか?
  14. まだ納品実績がない仕事も提案できますか?
  15. まとめ
  16. 参考資料

結論として、企業への営業は「仕事をください」ではなく、相手の業務のうち、事業所の支援体制で品質・納期・採算を守って担える工程を具体的に提案することから始めます。訪問前に作業量、検品方法、連絡担当、見積りの前提を整理し、まず小さな試行範囲を相談しましょう。A型は雇用契約に基づく就労、B型は雇用契約に基づく就労が困難な人への就労・生産活動の機会であり、契約条件と賃金・工賃の収支確認は分けて行います。1 2

企業に提案する前に、事業所側の「受けられる条件」を決める

企業名を集めるより先に、どの仕事なら無理なく受けられるかを棚卸しします。受注後に職員の確認工数や移動時間が想定外に膨らむと、売上があっても生産活動の収支や支援体制が成り立たないことがあるためです。厚生労働省は就労支援事業について、生産活動会計と福祉事業等の会計を区分し、自立支援給付から賃金・工賃を支払うことは指定基準違反(災害等の場合を除く)と案内しています。2

提案可能な作業を工程単位で書き出す

「動画制作ができます」「軽作業ができます」のような広い表現では、企業は発注後の姿を想像しにくくなります。作業を工程に分け、事業所が担う部分と職員が確認する部分を示します。たとえば動画関連なら、素材受領、字幕の誤字確認、指定テンプレートへの入力、納品前の再生確認のうち、実際に対応できる工程だけを選びます。封入や検品なら、数量の数え方、良品・不良品の基準、完了報告方法までを決めます。

次の記入例は説明用の架空例です。記載した数量や納期は標準値ではなく、各事業所で実測して埋めてください。

提案項目 記入例 確認すること
企業の業務課題 毎月発生する資料封入を社内で処理しきれない 発注元が困っている工程・頻度
切り出す作業 指定資料の封入と数量確認 手順書や見本の有無、個人情報の扱い
対応可能量 試行分を実測後に回答 利用者の参加状況、職員配置、設備
品質確認 作業者の確認後、職員が抜き取り/全数確認 基準、確認者、記録方法を事前合意
納品・連絡 納品方法と締切を個別合意 運搬費、受渡し時間、遅延時の連絡先
見積り前提 作業時間・材料・検品・移動等を積算 売上だけでなく経費控除後の収支

この表は、実績がないのに対応量や品質を保証するためのものではありません。経験のない工程は「試行で所要時間と検品負荷を確認してから、継続条件を回答」と伝えます。

提案先は「課題との適合」と「取引の実現性」で選ぶ

候補企業は、地域の製造・物流・小売・宿泊・飲食・士業など、定型業務や反復するバックオフィス作業が発生する事業者から探せます。ただし業種名だけで適合を決めず、実際に外部へ切り出せる作業があるかを確認します。候補のきっかけには、既存の取引先・地域団体からの紹介、商工会議所等への相談、事業所の近隣企業への問い合わせのほか、自治体の調達方針や共同受注窓口があります。厚生労働省は、国・地方公共団体等による対象施設からの物品・役務調達の制度と、都道府県の共同受注窓口・施設情報の案内を公開しています。3 4

優先調達制度は国・地方公共団体等の調達に関する制度です。民間企業に発注義務がある、または制度を示せば受注が決まるという意味ではありません。民間企業には通常の取引として、対応可能な内容、見積り、納品条件を提案します。公的調達へ応募する際も、調達方針・対象施設要件・担当窓口・個別の契約条件を発注機関に確認してください。3

提案先を選ぶ際は、次の四つを一件ずつ確認すると、訪問件数だけを追う営業になりにくくなります。

  1. 反復性:単発の作業か、毎週・毎月など継続して発生する工程か。
  2. 作業との適合:工程を分け、利用者の希望や得意、支援上の配慮に応じて役割を調整できるか。
  3. 運用可能性:必要な職員確認、設備、移動、情報管理を含めても納期を守れる見通しがあるか。
  4. 収支可能性:見積額から生産活動に必要な経費を控除した後の収支が、目標とする賃金・工賃や事業継続に照らして妥当か。

このうち一つでも確認できない場合は、契約を急がず、追加質問か小規模な試行へ進めます。受注経路の使い分けや案件探しを広く整理したい場合は、就労支援事業所が仕事を受注する方法も参照してください。

初回連絡から小規模な試行まで

1. 企業ごとに仮説を立てて問い合わせる

初回連絡の目的は、その場で契約を取ることではなく、担当者と課題を確認する機会を得ることです。企業の公開情報から、繁忙期、拠点、サービス内容などを調べたうえで、「御社の○○業務のうち、定型作業を切り分けられるかご相談したい」と仮説を伝えます。相手の事情を聞く前に「何でもできます」と約束したり、障害福祉への理解を一方的に求めたりしないようにします。

電話・メールの記入例

○○株式会社 ご担当者様

私どもは地域で就労継続支援(A型/B型)事業所を運営しています。御社の○○業務について、定型工程の一部を事業所で担える可能性があるか、一度お話を伺いたくご連絡しました。現時点で作業量や納期を確約するものではありません。作業内容・品質基準・情報管理などを確認し、対応可否を検討できればと考えています。ご担当部署をお教えいただけますでしょうか。

A型・B型の別は実情に合わせて記し、支援の仕組みを誤解なく説明します。支援の仕組みを説明することと、利用者個人の障害・健康情報を企業へ渡すことは別です。個人が特定される情報は提案資料に載せず、必要な情報の共有は本人同意や法令、事業所ルールを確認して取り扱います。

2. 面談では「仕事の条件」を聞き取る

面談で尋ねる項目は、現状の作業工程、発生頻度、繁忙期、希望数量、希望納期、完成基準、検品・修正の範囲、素材や資材の受渡し、担当窓口、情報管理、安全上の注意です。企業が外注したい理由も確認します。人手不足の補完なのか、社内で滞留する工程の切り出しなのか、地域調達の検討なのかによって、提案する工程や説明が変わります。

その場で答えられない数量や価格は持ち帰ります。現場見学や試行を提案するときは、実施場所、参加者への支援体制、事故・破損時の連絡、成果物の権利・秘密情報の扱い、費用負担を先に話し合います。企業現場で作業する形態や施設外就労に該当する可能性がある場合は、現場運用を決める前に指定権者の最新の取扱いと要件を確認してください。

3. 試行の範囲と評価方法を合意する

試行は、初回から大きなロットや恒常的な納期を約束するのではなく、少量の仕事で作業時間、支援・検品の負担、手戻り、必要経費を確認できる範囲にします。試行が無償か有償かを慣行で決めつけず、業務委託の範囲、成果物、対価、材料・運搬費、検収、支払時期、キャンセル条件を当事者間で合意します。契約書や発注書の要否・形式は取引内容に応じて確認してください。

試行後は、次の記録を残します。

  • 実際にかかった作業時間(利用者の作業と職員の支援・確認を分ける)
  • 予定数と完成数、基準不適合数、修正内容
  • 材料費、外注費、運搬費など生産活動に関係する経費
  • 企業側の評価、次回の希望量・希望納期
  • 利用者の参加状況や作業上の配慮、次回に変える手順

記録例:『試行分は工程別に実測。企業の完成基準と事業所の検品記録を照合し、職員確認時間を含めた継続条件を再見積りする。次回数量は双方の確認後に決定。』これは記載形式の例であり、実績を示すものではありません。

見積りは売上だけでなく、経費・賃金または工賃の原資を確認する

受注額は生産活動の売上であり、そのまま利益や利用者に支払う額になるわけではありません。材料費、梱包費、配送・移動費、機器・ソフト等の費用、職員の確認に必要な時間など、案件に関連する経費を洗い出し、事業所の会計方針に沿って収支を確認します。経費控除後の残額も、経営上の利益と同義とは限りません。A型・B型の会計処理や賃金・工賃の取扱いは異なるため、制度に沿った帳簿・支払の確認が必要です。2

見積り前の確認項目 試算メモに残す内容
作業量 受注数量、工程別の想定時間。試行前なら仮定と明記
直接経費 材料、梱包、配送、外注等の見込み額
運営負荷 支援、進捗管理、検品、修正連絡に必要な職員時間
納品条件 検収基準、修正範囲、納期、分納の可否
生産活動収支 売上から必要経費を控除した見込み。実績と試算を区別
利用者への支払 A型は雇用契約に基づく賃金、B型は工賃として別途確認

A型では利用者と雇用契約を結ぶ就労であること、B型では雇用契約に基づく就労が困難な人に就労・生産活動の機会を提供することを前提に、受注量と支援体制を設計します。1 生産活動の売上を給付費や事業所全体の収入と混同したり、受注額だけから利用者への賃金・工賃額を約束したりしないでください。具体的な会計処理、施設外就労、契約・労務上の判断は個別事情により異なります。自治体や指定権者、必要に応じて専門家に確認してください。

案件を受けた後の納期・品質管理については、受注した仕事の納期と品質を管理する実務ガイドも役立ちます。契約前に制作範囲、成果物、修正条件、情報管理を整理する場合は、企業案件の制作範囲と契約条件のチェックリストを確認してください。

営業記録を残し、次の提案へつなげる

企業ごとに、連絡日、担当者、提案した工程、確認できた課題、未確認事項、次の連絡日、試行結果を一枚に記録します。「断られた/受注した」だけで終わらせず、断りの理由が業務量、時期、価格、社内決裁、情報管理のどれかを残すと、次回の提案先や説明資料を見直せます。既存の取引先にも、納品後に品質・連絡・次回需要を聞き、継続できる条件を合意します。

企業への提案をきっかけに動画制作を新たな生産活動として検討する場合は、職員研修、作業工程、品質確認を段階的に設計してください。導入条件や運営支援の内容はシゴトプラスの導入・運営支援で確認できます。サービスは法人向けの有料支援であり、仕事の受注代行や売上・収益を保証するものではありません。

よくある質問

営業資料には何を載せればよいですか?

事業所の基本情報に加え、実際に提供できる工程、対応可能な条件、納品・検品の流れ、問い合わせ先を載せます。数量・品質・過去実績は確認済みの範囲だけ記載し、まだ経験のない仕事は「試行後に回答」と明示します。利用者個人を特定する情報や、許可を得ていない写真・成果物は掲載しません。

障害者優先調達制度を使えば、民間企業から受注できますか?

同制度は国・地方公共団体等の物品・役務調達に関する制度であり、民間企業一般へ発注義務を課す制度ではありません。3 民間企業への提案では、相手の業務課題と作業条件を起点に通常の取引として話し合います。

A型とB型で提案内容を変える必要がありますか?

はい。企業へ示す作業範囲・納品条件は共通の確認項目がありますが、A型は雇用契約に基づく就労、B型は雇用契約に基づく就労が困難な人への就労・生産活動の機会という制度上の違いがあります。1 支援体制、賃金・工賃、会計処理を同じものとして説明せず、受注条件が運営基準に適合するか指定権者等へ確認してください。

まだ納品実績がない仕事も提案できますか?

提案自体は可能ですが、実績があるように見せてはいけません。「工程を確認したい」「小規模な試行で所要時間と検品方法を確かめたい」と伝え、試行の費用・成果物・基準・責任範囲を合意してから進めます。対応可能量や継続条件は、記録を基に判断してください。

まとめ

企業への提案は、事業所の対応能力を並べるだけでも、企業に福祉への理解を求めるだけでも前に進みません。相手の業務課題を聞き、工程を小さく切り出し、支援体制・品質・納期・情報管理・生産活動収支の条件をそろえて、無理のない試行から確かめます。A型の賃金とB型の工賃、売上と経費控除後の収支、実績と試算を分けて説明し、制度・契約の個別判断は指定権者等に確認することが、継続できる提案の土台です。

参考資料

  1. 厚生労働省「福祉・介護障害者の就労支援対策の状況」—A型・B型のサービス概要。
  2. 厚生労働省「福祉・介護障害者の就労支援対策の状況」—生産活動会計の区分と賃金・工賃に関する案内。
  3. 厚生労働省「国・地方公共団体等における障害者就労施設等からの調達について(優先調達)」—制度対象、調達方針・窓口。
  4. 厚生労働省「障害者就労施設等情報」—施設情報検索および都道府県共同受注窓口。
  5. LITALICO仕事ナビ「就労継続支援B型の工賃アップを実現する『営業』の始め方とは?」—検索競合観測資料。
  6. Knowbe「就労継続支援B型の仕事の取り方6選!受注先の開拓と営業のコツ」—検索競合観測資料。

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